北京の天安門広場で民主化運動を展開した学生や市民に対し、中国共産党は武力行使で鎮圧を行った。あれから20年。誰が今の中国を想像できただろうか?
事件後ほどなく、ベルリンの壁が崩れ、冷戦体制は崩壊した。中国共産党も政治改革が迫られるであろうという予想であったが、そうはならなかった。そして、経済分野でのめざましい興隆が始まった。リーマンショック以降、奈落の底に沈みかけた世界経済を支えているのは今や中国である。4兆元(約56兆円)の内需拡大策を打ち出し、リーマン破綻からわずか2カ月弱の早業で世界が目をむくような巨額の財政出動を決めた。現場の動きも早い。一党独裁の号令一下、中国の原材料、家電、自動車の輸入量は急増し、ソニーやトヨタなど日本の外需依存産業はたまった過剰在庫をほぼ一掃することができた。
自由主義社会の命運を、事実上最後に残された「赤い国」が握ることになろうとは、なんとも皮肉な結果である。