IT、電気、通信、機械、医学、化学などさまざまな技術分野の情報を、マニュアル、仕様書、契約書などの形に整えながら翻訳する際に使われる工業英語。文部科学省後援の工業英語能力検定(通称「工業英検」)は1981年より実施され、これまでに13万人の有資格者(1~4級)を生み出している。
工業英検の主催団体は内閣府認定の公益法人日本工業英語協会。 同協会の理事を務め、自ら講師として指導にあたって工業英語の普及と啓発に尽力してきた平野さんに、工業英語とは一体どういうものを指すのか、まず聞いてみた。「あらゆる産業の現場で生まれる科学技術情報を、対象読者に合ったレベルで、正確に、かつ分かりやすく伝える技術のことです。工業英語にあたる英語は、Technical Writingが一般的です」
工業英語と聞くと、一般英語に比べて特殊で難しそうだという印象を受けるが、専門技術の説明だからこそ、部外者や一般のユーザーが分かるように平易な英語にする必要があるのだという。
「英語に翻訳するからといっても、製品のユーザーが必ずしもネイティブであるとは限らない。むしろそうでないケースの方が多い分野もあります。ですから、あらゆる国の人がすんなりと理解できる英語であることが何よりも大事なんです。テクニカルライティングの基本は3つのC(Clear・Concise・Correct)。明確で具体的で、簡潔ながら情報の不足はなく、情報が正しいことが求められるのが工業英語です」
3Cの条件を満たす英語にするということは、「全ての日本語を翻訳するのではなく、必要なものだけ簡潔に伝える」ということだそうだ。となると、情報の整理と取捨選択がポイントになる。「時には、日本語にないものを補う作業も必要になります。そういう意味では、行間を読む能力が肝心。工業英語はロジカルでカタいと思われがちですが、実は、想像力を働かせる点では文芸翻訳と共通するところがあります」
平野さんはこれまでセミナーの形で工業英語表現を教えてきたが、来年度から講座を開講して受講生を募ることが決まっている。「工業英語で行う、ムダを省いて要点を正確に伝える技術は、あらゆる英語表現のベースといえます。相手に伝えるための土台がしっかりしていれば、気の利いた表現や遠回しな言い方などを付け加えて、いくらでも応用できます。単に英語力を磨きたいという人にも十分役立つ講座になると思います」
通訳・翻訳業界総合ガイド2012-2013年度版
This site has been optimized for modern browsers. Please make sure that Javascript is enabled in your browser's preferences.
The Japan Times Ltd. All rights reserved.